地域おこし協力隊が多様であることの所以は、そのミッションにある。

このミッション自体が多様であることはもちろんのこと、ミッションの設定方法やそれに関わる人間関係でさえも非常に多様で、どれ1つとっても同じものはない。

そんな多様なミッションについて、大きな特徴の1つといえるのが、フリーミッション型とミッション型の違いである。

この2つの違いを簡単にいうと、特に始めからミッションを用意されておらず、地域おこし協力隊自身がそれを設定するのがフリーミッション型、最初から行政あるいは地域事業者等によってミッションが設定してあるのがミッション型である。

こうしたミッションのパターンにもそれぞれメリットとデメリットがあり、それらをしっかりと把握したうえで地域おこし協力隊とつき合っていく必要がある。

先ずはフリーミッション型について考える。

自分でミッション自体を設定することのできるフリーミッション型は、後天性ミッションと言い換えても良い。

最初から何かミッションが決まっている訳ではないので、先ずは地域に入っていって、地域住民との挨拶や日常会話から地域の困りごとや地域課題について自ら感じ取るところから始まる。

そうして自分なりのミッションを組み立てて、行政担当者に相談し、共感していただけたところからミッションスタートである。

フリーミッション型の中には、「どんなミッションでも構わないが、観光振興に係る事をやって欲しい」といったような、領域限定フリーミッションも多く見られる。

この場合、その領域は「観光」「情報発信」「1次産業」「移住促進」などが多く、いずれもざっくりとした設定であるため、協力隊自らがミッションを組み立てる労力は純粋なフリーミッション型とほとんど変わらないといえる。

このフリーミッション型のメリットは2つ。

なお、このミッションについてのメリット・デメリットは地域おこし協力隊から見た側面と行政担当者から見た側面の2方向からまとめてみたいと思う。

 

地域おこし協力隊にとってのフリーミッションのメリット

①自分が感じた事を0から組み立ててミッションにできるということ

普段、仕事や地域活動に取り組むうえで、全くの0から事業を組み立てて実行するという経験はなかなかできない。

しかし、このフリーミッションの場合、そうした事業の立ち上げプロセスから自分が携われることが多い。

それどころか、自分が中心的な役割を担うことがほとんどだ。

自分自身が感じたことをそのままミッションにすることもできるので、やりがいや充実感は大きい。

 

行政担当者にとってのフリーミッションのメリット

①思いも寄らない発想による事業を生み出せる可能性がある

よそ者である地域おこし協力隊自らが地域に乗り出して課題を設定するフリーミッションの場合、これまで地域にどっぷり関わってきた人では分からなくなってしまっている地域の魅力や問題点などが抽出できることが多い。

こうした発想を基に事業を組み立てることで、よそ者ならではの斬新な取り組みを行える可能性が充分にある

地域おこし協力隊にとってのフリーミッションのデメリット

①ミッションを設定するまでに多くの時間を要する

フリーミッション型が一番苦労する時期は、自身のミッションを設定するまでの期間である。

とにかく地域に入り込んで、色んな方とのコミュニケーションを通じて地域の事を知っていく必要があるのだが、無数にある地域の課題の中からいくつかを自身のミッションとして選出する作業は非常に困難であり、1年間たってようやく自分のミッションが見えてきたというケースも少なくない。

 

②何でも屋になってしまいがち

そうしてミッションを決めかねているうちにも、地域イベントや農作業のお手伝い、自治会やコミュニティの会合・宴会への参加などをお願いされてしまい、気がついたら何でも屋になっているケースもある。

出来るだけ早く自分のミッションを確立させるのが望ましいが、1人よがりのミッションになってしまっては元も子もない。

地域としっかりつき合っていきながら、地域課題の本質を見極め、地域おこし協力隊だからこそ、自分だからこそできるミッションを慎重に探っていきたい。

 

行政担当者にとってのフリーミッションのデメリット

①地域への貢献度が低くなる可能性がある

地域おこし協力隊が、自ら地域に入り込んで、自身の感じた課題をミッションにまで組み立てていくとはいえ、もともと地域おこしのプロフェッショナルではない協力隊は、日々の活動の中で様々なことを感じ、ミッションの根幹部分がぐらついてしまうことも多い。

悩みながら色んなことにチャレンジしていくのは、当然必要なプロセスであるが、最長3年という短い期間を考えても、出来るだけ早い時期に自らの核となる活動を打ち立てられることに越したことはない。

1年目は挨拶周り、2年目は農作業手伝い、3年目は観光イベント手伝い。

こうした活動の場合、その場その場では地域に貢献できているといえるが、地域おこし協力隊の任期後にその地域が自ら自転していける仕組みを残せるかというと、少し疑問である。

ミッションが不明確ゆえに、活動の軸が定まらず、結果的に何も残せないというリスクが高まるのだ。

 

②スキルや知識を持った人は応募してこない

フリーミッションで募集を行う場合、特定の業務に従事してもらう予定が無いので、どうしても募集要項はボヤッとした内容になる。

募集間口を広げることでたくさんの人が応募しやすくなるのは事実だが、特定の知識やスキルを持った人は反対に応募してこなくなる。

彼らは自身の知識スキルが活かせる場所を求めており、募集要項からそれが叶う地域かどうかを見極めているのだ。

「デザインの力で地域を盛り上げる」「動画でご当地プロモーション」「ご当地商品プロデュース」メディアでも度々取り上げられているようなクリエイティブな地域おこし協力隊が必要な場合は、ある程度ミッションは絞って、それに共感できる人材にアクセスしてもらう必要がある。

 

続いて、ミッション型について考えてみる。

募集の段階で地域おこし協力隊にやってもらいたいことがある程度明確になっているものがミッション型である。

農産物のブランド化や空家バンクの運営、道の駅の販路拡大など、様々なミッションが存在する。それらのミッションを掲げて募集をするため、ミッションに共感した方や必要な職能を持った方が集まってくることが多い。

こうしたミッション型のメリット・デメリットについて考えてみる。

 

地域おこし協力隊にとって、ミッション型のメリット

 

①やるべき事が最初から明確

フリーミッション型のデメリットの部分で述べたとおり、地域おこし協力隊が自身のミッションを設定することは最も大変な作業といっても良い。

ミッション型の場合は、こうした辛いプロセスを省略することができる。

正確に言うと、地域おこし協力隊が入る以前に、行政や地域住民らがその大変な作業を代わりに行ってくれているのだ。

地域おこし協力隊として就任した間もない頃から自分のやるべき事が明確で、それに力を注ぐ事ができるというのは非常に大きなメリットと言える

 

②想いが似ている協力隊と一緒に活動することができる(複数人いる場合)

事前に設定されているミッションに対して、「共感できる」「自分なら役に立てる」と感じる方が集まるので、地域おこし協力隊の周りには自身と似た想いの人がいる場合が多く、一緒にスクラムを組むようにして活動を進めることができる。

新天地というただでさえ孤独を感じやすい環境にいる地域おこし協力隊にとって、自分と同じ想いを持った人がそばにいるという環境はとても心強い。

 

行政担当者にとってのミッション型のメリット

①地域にとって最善のミッションを取り組んでいただける

地域の課題や今後のビジョンについて、一番良く理解出来ているのは、やはりその地域で様々な活動をしてきた行政・地域住民であると言える。

そうした人々が事前に「地域おこし協力隊にどんなことをしてもらいたいか?」を決めることは非常に意味のあることだ。

また、地域の課題やビジョンを見直すきっかけになるという意味でも非常に大きなメリットと言える。

②課題に応じた職能を持った人を招集することができる

事前にミッションを明確にすることで、そのミッションにふさわしい人物像を浮かび上がらせることができる。

情報発信やPRに特化したミッションであればデザインや写真といったクリエイティブなスキルを持った人材が必要になるかもしれないし、空き家の利活用をミッションとして掲げる場合、建築や不動産といったハード整備に係る知識・経験がある人材が望ましいといえる。

こうしたミッションと人材のマッチングができるのも、大きなメリットだ。

 

③地域住民に自分事に感じてもらえる

ミッションを設定する際、地域住民を巻込みながら決めることから、彼らに地域おこし協力隊を自分事として考えてもらいやすい。

地域おこし協力隊の成功は、地域・行政・隊員の三者の連携が欠かせない。

地域住民をいかに地域おこし協力隊に本気で向き合ってもらうかは行政の腕の見せ所である。

しっかりと事前準備の段階から積極的に関わっていただき、ゆくゆくは地域と隊員の2者で自転していくような体制、行政はそれをフォローするような体制にしていきたい。

 

地域おこし協力隊にとってのミッション型のデメリット

①ミッション以外の事はやりにくい

始めからミッションが決められている地域については、配属後に自身が感じる地域課題や地域住民からの相談事があった場合でも、それがミッションと関係性の低いものあるならば、すぐにそれを地域おこし協力隊として着手することは難しい。

もともとの契約がミッションに応じたものであるから、当然といえば当然のことなのだが、課題が多様で現場に入って初めて分かる事の多い地域というフィールドにおいては、厳しい一面であるともいえる。

 

②本当にその地域に最良のミッションなのか

そもそも定められているミッション自体が地域課題に則しているかどうか疑問に感じるケースも多い。

ミッション策定にあたり、行政担当者がデスクに座ったまま決めたものなのか、それとも地域の方との入念な打ち合せの末に決めたものなのか。

策定のプロセスをいかに丁寧に進めてきたかが問われる部分である。

前者の場合、担当者の独りよがりによって策定された地域の実情に則していないミッションである場合が多く、そうしたミッションの遂行により得られる成果はあまり期待できないというのが正直なところだ。

 

行政担当者にとってのミッション型のデメリット

①ミッション設定に係る時間と労力は大きい

ミッション設定のプロセスの段階で、地域の方と一緒にどれだけ地域について悩み抜けるかがミッション型の肝とも言える。

その意味において、時間と労力のコストは際限なく係ると認識して間違いない。

もちろん、こうしたコストをかけずに形だけのミッションを設定することも可能ではあるが、それではまるで中身のない名ばかりのミッションが出来上がるだけである。

何も生まないミッションを遂行するためにかける様々なコストほどのムダなものはない。

どれだけ時間をかけてもじっくり地域の方と一緒に、身体と脳みそに汗をかきながらミッションを設定していただきたい。

 

②募集の間口は狭くなる

募集の段階である程度ミッションに合った職能を求めることが多いミッション型の場合、興味があるひとなら誰でも良いというわけではないので、どうしても応募人数が少なくなる傾向がある。

しかし、日本全国には、必ずミッションに共感してくれる且つスキルを持ち合わせた方は存在する。

ミッションに応じて誰に届ければ良いかをしっかり吟味して、その方に伝わる方法で募集のPRをする必要がある。

たくさん応募を集めることが目的ではなく、やる気とスキルを持ち合わせた人が1人でもいればよい。

 

地域おこし協力隊を志す方へのポイント

①フリーミッション型かミッション型かを事前にしっかりと確認

自分が希望する地域がどちらのミッション型かを事前に把握し、委嘱後に「イメージと違った」というミスマッチが起きないようにしておきたい。

このとき注意すべき点は、どちらの型かどうかは各地域から出されている募集要項からは判断が難しいということだ。

どの地域の募集要項にもある程度、地域おこし協力隊としてどんな事をしてもらいたいかという業務概要は記載されている。

その意味においては、全ての地域がミッション型であるように見えてしまうが、この業務概要だけを見て判断してはいけない。

ミッション型かフリーミッション型かどうかは、1度しっかりと地域の方と会って話しする中で判断することをオススメする。

「具体的にどんなミッションですか?」と直接聞いてみるのも良いだろう。

物理的に会って話すのは厳しいとしても、少なくとも電話で地域の方とコミュニケーションを取っておきたい。

ミッションの事だけでなく、受け入れるための態度や熱心さ、誠実さなど様々なことを感じ取ることができる。

 

地域おこし協力隊を導入予定の自治体の方へのポイント

①ミッションを通じて達成したい状態をしっかりと掲げるべき。

地域の課題や政策に則したミッション型(あるいはミッション)を選択し、そのミッションを通じてどんな未来が、地域あるいは地域おこし協力隊に訪れるかをしっかりとイメージすることが大切である。

この作業を地域住民と協働で行うことこそ、地域おこし協力隊事業の肝になる。

ミッションの設定方法等については第三章でまとめたのでそちらを必ず読んでいただきたい。

間違っても地域おこし協力隊の導入自体が目的となってしまい、達成したイメージが曖昧なまま物事が進んでしまうことのないようにしたい。

 

②委嘱後は実情に則した柔軟な対応が必要

事前にミッションやミッション後の地域の未来について明確にイメージし、そのための準備をしっかりと進めていく必要があるのは前述の通りである。

しかし、そうして造り上げたミッションや体制も、地域おこし協力隊の委嘱後、実際の実情に合わせて柔軟に変化させることが非常に大切である。

地域おこし協力隊のキャラクターやスキル、地域・メディア・観光客の反応など、全て事前のイメージ通りということはありえない。

1度決めた事に対して、柔軟に変化していくことは、非常に労力がかかることは否定できないが、実際に動いていく中で出てくる様々な事象について、しっかりと向き合って、柔軟に対応できるかということこそ、地域の技量・度量が試される場面である。