こだわるべき「導入目的」とこだわりすぎない「手法」

前回「導入目的には徹底的にこだわる」ということをまとめさせていただいたが、ここではその反面、「ミッションにはこだわり過ぎるな」ということを述べたいと思う。

導入目的にこだわる理由は、そのプロセスとビジョンの重要性にある。

地域おこし協力隊の導入目的を明確にしようとする際、必ず「地域の課題とは何か?(課題掘り下げ)」「どんな状態になればそれが解決できるのか?(ビジョン設定)」を行う必要がある。

この時、このプロセスを地域・行政が共に経験すること及び、そこで設定した地域のあるべき姿(ビジョン)を共有するということが非常に重要である。

ここで共有された体験及びビジョンは地域おこし協力隊事業を進める上で、地域と行政との約束事であり、指針として機能するからだ。

地域おこし協力隊事業で、活動が行き詰まってしまったり、トラブルが起きた時などは、こうした体験とビジョンを振り返って、導入目的を確認し、軌道修正を図っていけばよい。

予想外の展開は必ず起きる。

一方で、ミッションは、導入目的の根拠となるビジョンを達成するための手法に過ぎない。

したがって、地域おこし協力隊が活動中に当初の想定通りに成果が挙げられないなどの事態が発生した場合には、その手法を見直し、時には修正・変更が必要な場合があるだろう。

何か新しいプロジェクトをスタートする場合、事前に課題や労力、コスト、期待される効果などを想定して具体的な方法・戦略を決定していく。

しかし、実際にプロジェクトが動き出すと、良い意味でも悪い意味でも当初想定していたもののように事態は進まないのが世の常だろう。

予定よりも時間が係ってしまったり、当初想定していた効果が得られなかったり、予想以上に反響があって嬉しい誤算が生じたり。

こうした事態は、ほとんどの方が経験したことがあるのではないだろうか。

まして、多様な方が参画することの多い地域のプロジェクトでは、こうした「予期せぬ展開」は100%に近い確率で起こる。

地域おこし協力隊のミッションについても同様だ。

むしろ、外部から来た人材が地域に起こす科学反応は誰にも想像ができないため、通常の地域プロジェクト以上に「何が起こるか分からない」という代物といえる。

こうしたプロジェクトの場合、その効果・影響に合わせて、ビジョン達成のための手法を柔軟に変化させることが、成否を左右する重要なポイントの1つである。

柔軟な変更が出来るかが試される

例えば、「一次産業の活性化を通じて、地域に元気を取り戻したい」というビジョンを持っている地域が、地域おこし協力隊のミッションとして「地場産品を活用した特産品の開発」を設定していたとする。

当然、地域おこし協力隊は地域にはどんな地場産品があるのかという調査をする所からスタートし、地場産品の質の高さや生産者の想いに触れることになり、次第に農業に興味を持つようになる。

そんな中、地場産品を利用した商品開発に成功し、販売を開始する。商品の売れ行きは上々だが、もともと生産者が少ない地域であることから、大量に商品を生産することはできず、売上も微々たるものに留まっている。

そんなとき、あるお客さんから「こうした野菜を収穫体験できるところはないか?」と聞かれ、自身も生産者の1人となって、地場産品を生産する傍らで観光農園としてお客さんに農業体験をしてもらえる仕組みを作ったらどうかと想いを巡らせるようになる。

このように活動の中で新しいアイディアや展開に巡りあうケースは、地域おこし協力隊の活動の中でよく見られる。そして、こうした場合に、いかに柔軟に対応していけるかが、ビジョン達成の重要なポイントの1つである。

当初のミッションにこだわり「商品開発に集中してくれ」と判断するケースも当然ある。

しかし、1度冷静に状況を見渡し、徹底的にミッションに沿って活動するべきなのか?状況に合わせて活動に幅を持たせるべきなのか?を考えられる土壌があるということも非常に需要だ。

もちろん、なんでもかんでも手を出してしまうのは良くない。

しかし、地域や協力隊の反応を素直に捉えて活動を変化させるのも1つの方法である。

最終的なビジョン(先の例では「一次産業の活性化を通じて、地域に元気を取り戻したい」)が最終的にたどり着きたい場所であって、そこにブレが生じないかぎり、そのプロセスにおけるミッションは常に一考の余地があると考えている。

先の例の場合の対処法として、週の半分は農業活動をする時間、残りの半分は商品開発に充てる時間と区切りをつけて徐々に活動に幅を持たせることもできる。

その中で、さらに実情に合わせてどちらかにシフトしていくという変化も必要かもしれない。期待したほどの効果は得られないかもしれないが、どうなるかは誰にも分からないからには、やってみないと分からない。

一番の悪はミッションにこだわり過ぎるあまり状況に盲目になり、考えることを辞めてしまうことだ。

1度決めたことを変えるというのは、行政の苦手分野である。

しかし、地域おこし協力隊がもたらす地域への影響は想像し得ない。

つまり、どんなに綿密に打ち合せを重ねて決定されたミッションであっても、実情に合わせて上手に変化することはそれ以上に大切なことなのだ。

地域のビジョンには徹底的にこだわり、そのためのミッションにこだわり過ぎない。

様々な要素を考慮して、労力を惜しまず、柔軟に変化すべきである。