地域おこし協力隊の勤務場所は3つのパターンに分けることができる。

①市役所勤務②支所・出向先勤務③在宅勤務である。

①市役所勤務、②支所・出向先勤務は、他の職員の方と同様に市役所もしくは支所・出向先に通っている。

大抵の場合、担当課内にデスクがあり、一見すると他の職員とあまり区別がつかない。

③在宅勤務の地域おこし協力隊がいることに驚いた方もいただろう。

この場合、通常時は自宅でできる業務(デザインや農作業など)をこなし、週に1日や月に1日は市役所に出向いて、担当の職員と業務の進捗や近況を報告している。

それぞれのメリット・デメリットをまとめてみることにする。

②支所・出向先勤務については、①市役所勤務と③自宅勤務の中間的要素を持つが、中でも特徴的なメリット・デメリットについてまとめた。

 

①-1市役所勤務のメリット

・行政、地域おこし協力隊間の意思の疎通が図りやすい。

基本的には両者が毎日顔を合わせる事になるため、その場での意思疎通が図りやすい。

アイディアやひらめきをすぐに相談できる環境があることはとても重要である。

・「あそこに行けば会える」という居場所が分かりやすい

地域の方との信頼関係を構築する際、居場所が決まっているということは大きな意味をもつ。

「あそこに行けば会える」「あそこにいる人」

こうした“分かりやすさ”が安心と信頼を生み、地域の方との関係作りをやりやすくしてくれるのだ。

・役所の備品を活用することができる。

電話やコピー機、各種文房具などの役所の備品を使用することができることもメリットの1つと言える。

細かな所だが、意外にこうした環境があるのと無いのとでは事業のスピードが大きく変わる。

 

①-2市役所勤務のデメリット

・地域おこし協力隊と地域の方とのコミュニケーションの時間が減る。

役所勤務の場合、どうしても地域に出向く時間が少なくなりがちで、地域の方と過ごす時間が減ってしまう。

地域の課題やニーズは、地域の方とのコミュニケーションの中から見つけることができる場合がほとんど。

役所勤務の場合でも積極的に外出して、地域の人とのコミュニケーションの時間を長く取りたい。

・役所仕事の雑用を頼まれやすい

市役所の中にいると、どうしてもコピーや電話番、荷物運びなど、いわゆる雑用を任されがちだ。

若くて力がある男性は特にその傾向にある。

もちろん、職場の関係性を維持するためにある程度の雑用はお互い様で行う必要があるが、地域おこし協力隊の本来の主旨を考えると、出来るだけ活動に集中できるような環境を整えておきたい。

決して雑用係にならないよう、バランス良く業務を行うことを心がけたい。

 

②-1支所・出向先勤務のメリット

・地域との距離も近く、活動に集中しやすい

比較的現場に近い支所や出向先の場合、地域おこし協力隊は常に地域が直接見える場所にデスクを用意してもらえることが多い。

また、支所や出向先では、決裁権を持った人間が居る場合が多く、地域おこし協力隊自身が多くの裁量を任せてもらえることもある。

さらには、どうしても様々な業務が舞い込んできやすい市役所本庁に比べ、特定地域の業務を請け負っている支所などは、活動への横槍が飛んでくることも少なく、活動に集中しやすい環境にあると言える。

 

②-2支所・出向先勤務のデメリット

・勤務先で地域おこし協力隊が孤立する可能性が高い

役所の支所や出向先機関の場合、少人数で様々な業務をこなしている場合が多く、1人1人が日々忙しく仕事している。

また、支所には地域おこし協力隊を所管している担当課の職員がいない場合もある。

よほど綿密に引き継ぎがされていない限り、地域おこし協力隊について、その主旨や採用プロセスを知っている職員は少ない。

周りにいる人間のほとんどが地域おこしに無関心であることから、次第に孤立していってしまうケースが多い。

 

・行政担当者と地域おこし協力隊との人間関係づくりが難しい

地域おこし協力隊の担当者が出先機関にいない場合、2者間のやりとりは電話かメールになる。

電話でやりとりできる場合はまだましだが、お互いに忙しくなるとメールでコミュニケーションを取るようになる。

メールを使う事自体は悪い事ではないのだが、それだけに頼ってしまうと危険である。

メールでのコミュニケーションは心情や微妙なニュアンスを伝えにくいため、誤解を招いてしまうことが多い。

大事な話や相談は電話で、決まった事はメールで確認とバランス良く使い分ける方がよいだろう。

もちろん、定期的に実際に顔を会わせる機会も必要である。

何にせよ。そばにいない分、人間関係が構築しにくい事は自覚しておく必要がある。

③-1自宅勤務型のメリット

・地域住民との密なコミュニケーション

自宅勤務の地域おこし協力隊は常に地域にいることから、地域住民とは綿密なコミュニケーションを取る事が出来る。

そうしたコミュニケーションを通じて、顔を覚えてもらいやすくなったり、地域の課題を知り得たりすることができる。

 

・通勤・帰宅の時間ロスが無い。働く場所を選ばない。

自宅が勤務地の場合、当然、移動に時間は係らない。気持ちの切り替えだけですぐに業務に取りかかる事ができる。

また、業務内容によっては、働く場所を選ばずに、時にはカフェで、時には図書館で、時には浜辺でと、好きな場所で業務を行うことができる。

クリエイティブな活動をする地域おこし協力隊にとってはとても心地よい環境だ。

 

③-2自宅勤務のデメリット

・地域おこし協力隊と行政担当者とのコミュニケーションの時間が減る

これは、当然ながら市役所勤務パターンと真逆の部分である。

意識してお互いのコミュニケーションの機会を作っていかないと、徐々に意思の疎通が図れなくなってくる。

個人的には必ず毎日会話する機会を作る事をオススメするが、それが叶わない場合でも、最低週に1度はしっかりと進捗状況の把握から心身の状態までを話し合える機会を設けるようにしたい。

両者のコミュニケーションは地域おこし協力隊を成功させる上でもっとも大切な要素と言っても過言ではないので、しっかりと体制を整えることは最重要項目とも言える。

・地域おこし協力隊まで情報が届かない可能性がある。

地域おこし協力隊は総務省をはじめとする全国の地域関連団体から様々な情報が入ってくる。

その多くが行政担当者宛に届き、そこから地域おこし協力隊に共有されている。

自宅勤務型の場合、行政担当者が情報を取捨選択し、必要な情報(行政担当者は不要と解釈したが、実際には地域おこし協力隊にとって有益だった情報)が届かない可能性が高い。

お互いにきちんとコミュニケーションが取れており、必要な情報まで共有できていればこうした事は起きないのだが、物理的距離があるとどうしても細かな行き違いが起きやすい。

情報が届かないことは地域おこし協力隊にとって大きなリスクだ。

しっかりとコミュニケーションを取って、必要な情報が集まるような体制を整えたい。

・公私のバランスを崩しやすい

自宅勤務の地域おこし協力隊にとって、仕事とプライベートの区切りをつけることは非常に難しい。

市役所勤務の場合、職場から離れ、帰宅した際は、自分だけのプライベート時間を設けることができ、リラックスすることが可能だが、自宅勤務の場合、勤務先とプライベートの空間の区別をつけにくい。

地域の方が自宅に訪れることも少なくなく、委嘱直後は困惑することも多い。

次第に「慣れました」とあっけらかんに話す協力隊も出てくるが、休みの日は地域外に出かけたり、隠れ家的なカフェで静かに過ごしたりと、それぞれが自分なりの方法でプライベート時間を確保している。

 

地域おこし協力隊を志す方へのポイント

①事前に勤務場所の確認を行う

必ず自分の希望する地域がどのタイプの勤務形態なのかを事前に確認しておきたい。

勤務場所によって、どの勤務形態が正解ということはなく、様々なメリット・デメリットがあることを理解したうえで、地域・行政と向き合っていくことで、どの勤務場所でも充実した活動ができる。

 

②特定の場所を決めて、「あそこに行けば会える」をつくる

これは自宅勤務の場合に是非実践していただきたいポイントである。

自宅勤務の場合、協力隊の活動場所に決まりがないことが多く、基本的にはどこでも業務を行うことができる。

しかし、地域の方にとっては「普段どこにいるのか分からない」と状態になりやすい。地域の方の何気ない相談から活動のヒントを得られることが多い協力隊にとって、地域の方がいつでも協力隊を頼って訪れてくれる場所を作っておく事は非常に大切である。

「あそこに行けば会える」という小さなことが、地域の方から信頼を得る重要なポイントであったりもする。

 

③直接的なコミュニケーションの機会を積極的に持つ

これも自宅勤務の場合に、特に注意していただきたいポイントである。

自宅勤務の場合、行政担当者とのコミュニケーションは基本的に電話やメール、SNSといったツールを利用したものである。

事務連絡をするだけであれば、こうしたツールを利用したコミュニケーションで全く問題はないのだが、活動や生活全般の悩み、心身の健康状態など、協力隊と行政とのコミュニケーションは会って話さないとなかなか前に進まない内容のものが多い。

電話やメールだけに頼ったコミュニケーションでは、必ずどこかでミスコミュニケーションが生じ、つまづいてしまう。

毎日直接会って会話する機会をつくるのが望ましいが、難しい場合は最低週に1度は顔合わせして進捗報告を行うようにしたい。

 

地域おこし協力隊を導入予定の自治体の方へのポイント

①ミッションに応じた最適な場所と柔軟な対応

勤務場所によって様々なメリット・デメリットが考えられるが、それらを理解したうえで自身の自治体ではどの形態を採用するかを検討する必要がある。

また、1度決まった勤務形態を活動内容に応じて、柔軟に変化させることも重要だ。

例えば、最初の1年目は市役所勤務で地域おこし協力隊とマンツーマンで活動の骨組み造や人脈づくりを行う。

活動の基盤ができたり、地域に慣れ始めた2年目の段階で、より積極的に地域に入り込むことができる自宅勤務形態に変更するなど、活動のプロセスに合わせた対応も効果的だと言える。

 

②地域で多くの時間を過ごすための環境づくり

これは市役所・出向先勤務の場合に注意していただきたい。

地域おこし協力隊の業務の中心は地域にある。その意味においては、少しでも長い時間を現場で費やしていくことが望ましいといえる。

極端な事をいうと、例え、用が無かったとしても、地域を回って地域住民と挨拶・簡単な世間話をするために外出というものも充分に必要な用務と捉えることができる。

自治体の中には、外出するためにいくつかの事務手続きを用意している場合もあり、協力隊がスピーディに外出することを妨げてしまっているケースもある。

当然、協力隊の行動を把握・管理することも必要なことであるが、協力隊が出来るだけ地域内で多くの時間を過ごせるように、日々の事務手続きはできるだけ簡略化されることが望ましい。

自治体によっては、自由に外出でき、日報でその日に行った事を把握するというケースもある。うまくバランスを取った環境づくりが大切である。